今日は、「糖」を違った視点で見ていきたいと思います。
単糖類の代表、「ブドウ糖」と「果糖」。その違いとどう摂るべきなのか。
そんなことを題材にしながら話を進めていきましょう。

 

 

 

「糖」へのいろいろな概念

「糖」というと、昔から民間療法では「万病の元」とされていました。
たとえば、マクロビオティックの桜澤如一が言っていた「三白の害」では、白砂糖、白米、白い塩と精製された白いものを摂ることの害を述べていますが、とくに白砂糖の身体に及ぼす悪影響について言及しています。
またその他にも、甲田光雄の「白砂糖の害は恐ろしい」やウィリアム・ダフティの「砂糖病(シュガーブルース)」、ジュン・ユドキンの「純白・この恐ろしきもの」、そして高尾利数の「砂糖は体も心も狂わせる」など、白砂糖の害に関するたくさんの書籍が出ています。

これらの中では、糖、とくに白砂糖は毒のように言われてきました。また糖分の害は常習性があり、大量に摂ると身体に悪影響を及ぼすというのが共通認識でした。

 

 

さて、栄養学の分野ではどうでしょう?

昔の古典的な栄養学では、「糖」は単なるエネルギー源だと考えられていました。
しかし、最新の分子栄養学や生理学では、糖の摂り過ぎの害についても話していますが、一方では、糖の様々な役割がわかってきています。

 

1.糖はエネルギー源(体の構成要素、生理活性物質、調整物質)
2.糖はタンパク質や脂肪と結びついて、細胞の表面にアンテナのようにくっつき、細胞同士の識別や、結合、情報交換、免疫反応、血液型の決定等、機能的頭脳的な働きをしている。
3.活性酸素の抑制、抗酸化作用(糖の種類によっては酸化的に働く)
4.保湿効果
5.精神安定、安眠を促す。ストレス解消、運動機能の調整
6.ナチュラルキラー細胞(ガン細胞を抑制する強力免疫細胞)の活性化(糖の摂り過ぎはガン細胞の増殖につながります)
7.タンパク質の腸管からの取り込みを助ける

 

ここでは、糖も身体に必要なものであるという認識ですね。

とくに細胞膜の表面に存在するアンテナ「糖鎖」は、糖がタンパク質や脂肪と結びついて出来ていますが、このアンテナが外部から来たもの善し悪しを判断しているといいます。60兆個の細胞のひとつひとつに糖がアンテナのようについているのですが、このアンテナは1つの細胞に500~10万個あると言われ、ここで良いものと判断されると細胞膜に入ってこれるのです。またこの「糖鎖」の先端部(一番感受性が良いところ)がしっかりしていないと、細胞膜にウィルス等が侵入してしまいます。
最近では、現代人は食生活の乱れにより、この先端部がうまく作られていないということがわかってきました。

これは大きな発見です。

 

 

また糖は脳の神経伝達物質がつくられるのにも大きく関わっていると言われています。
ドーパミン、セロトニン、そしてノルアドレナリンなどは、脳内の代表的な神経伝達物質で集中力、記憶力、学習能力を高めるためには欠かせません。ドーパミンは脳を覚醒させ、集中力を高めたり、ストレス解消のために働きます。ノルアドレナリンは集中、記憶、積極性などに関わり、セロトニンはドーパミンやノルアドレナリンの情報をコントロールし、精神を安定させる作用があります。
これらの神経伝達物質を作る手助けをするのが糖質だというのです。
神経伝達物質の多くはアミノ酸から作られますが、これを脳へ効率よく取り込むのに糖質が必要になります。
たとえば、セロトニンは、トリプトファンと呼ばれるアミノ酸から作られますが、糖はトリプトファンの脳への取り込みを助け、トリプトファンから作られるセロトニンが精神の安定を促します。またパーキンソン病でも知られているドーパミンもチロシンというアミノ酸から作られ、同じく糖によって取り込みを助けられ、運動機能を調節するのです。

また糖を摂ると、エンドルフィンというホルモンの一種も分泌され、快感中枢が刺激され、脳はリラックス状態になります。

糖は精神の安定や運動機能調節に関わる神経伝達物質を助ける役割をしていたわけです。

このように見ていくと、糖というのはまったくの悪ではないことが分かります。
やはり人にとってなくてはならないものなのです。

 

 

 

どんな糖が良いのか?

前回の記事では、GI値を紹介してGIの低い食品を勧めてきました。
糖質は、大抵ブドウ糖や果糖、乳糖などの低分子のものが組み合わさってできています。この種類のどれを摂るかによっても身体への影響は変わってきます。
糖質の摂り過ぎによる害は、現代病の原因にもなっていますが、そうは言っても身体にとって大切な栄養でもある糖。

どんな糖を摂っていけばよいのでしょう?

最近、日本人の糖尿病率は高くなってきました。
これは世代を追うごとに耐糖能が低下していることも原因ですが、かなりの日本人が主食であるブドウ糖からできたお米やパン、麺類、そしてブドウ糖を含んだ調味料や飲料水、そして同じく砂糖(ブドウ糖+果糖)を含んだお菓子や加工品のさまざまを摂取する量が増えたことに起因しています。
私が思うに、ほとんどの日本人はブドウ糖過多になっているのではないかと思います。

また日本人に限らず、お米を主体としたブドウ糖ばかりの主食を多く摂るアジアの人たちに、今糖尿病が激増しているのです。ブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンがないと、細胞内に入っていけないので、あまりに多くブドウ糖ばかり摂っていると、膵臓が疲れ果ててインスリンが枯渇してしまいます。
たしかに昔の人は、今よりもブドウ糖のデンプン質を多く摂っていたのに関わらず、糖尿病は少なかったと言えます。しかし、今の人が、昔に比べて日々の仕事で身体を動かしているでしょうか?現代社会では車や電車などの交通網が発達し、昔より歩く機会が格段に減りました。またパソコンなどの電子機器を使うことも多くなり、身体を動かすことが減ってきたことはまぎれもない事実です。これは子供にすら広がっていますよね。
身体を動かすことが多いとブドウ糖も筋肉でたくさん使われて、代謝されますが、現代人のように動かない生活では、血糖値が安定しないのは無理もないのです。
そして現代人は、お米以外にもお肉や卵、乳製品とカロリーの高いものを摂りすぎるようになりました。これによりカロリー全体量は、昔の人よりかなり増えていることでしょう。

 

こういう背景からほとんどの人が、自分が代謝できる以上にブドウ糖を摂り過ぎている傾向にあります。

私が、カイロプラクティックのシュガーテスト(血糖ストレスの有無をチェックする方法)をすると、問題のある患者さんのほとんどで、ブドウ糖が入っている糖に陽性反応(身体が今受け入れられない)があります。
一方、果糖(果物や野菜に含まれる糖)については、陰性の方が多く、果糖に過敏な人はほとんどいません。(もちろん中にはどちらもダメな人もいますが・・・)

こうみていくと、私は糖の中でも「果糖(フルクトース)」はそこまで敵対視するものではないのではないかと思います。ただ、慎重に聞いてくださいね。良いとは言っても過剰に摂取すると問題になりますから。
笑。

「果糖」は、血糖値をあまりあげることがなく、インスリンもそんなに要求しない糖です。
血糖値をあげずに代謝できるので、ある意味膵臓を疲れさせない糖とも言えます。

たしかに果物は、ビタミン・ミネラルが含まれていてみなさんの中でも健康に良いと思っている人も多いと思います。
しかし、アメリカでは、果物の中に含まれている果糖(フルクトース)の摂取量が増大すると肥満や生活習慣病の原因となると発表している研究もあります。

 

 

「果糖」はどのように考えれば良いのでしょう?

グルコース(ブドウ糖)は、体内に摂取されると血糖値が上がり、インスリンが分泌されて血糖値を下げるように作用します。これがうまくいかないと血糖調節異常になり、低血糖症や糖尿病になる場合もあります。
一方フルクトース(果糖)は、グルコースと違ってインスリンの分泌を促進しません。細胞内に取り込むときにもインスリンに依存しないのです。

これは一見良いように思いますが、分子栄養学の中では、血中に糖があふれてもインスリンが関与しないということは別経路で細胞内に入ってしまい、歯止めが利かなくなるのでは?と心配する先生もいます。
またフルクトース(果糖)を大量に摂ると肝臓に貯蓄されたり、高中性脂肪血症、高尿酸血症を起こす可能性があり、肥満にもつながるとはよく言われますよね。
あくまでも過剰に摂取した場合ですが。

最近「糖化」という言葉がにわかにテレビなどで話され始めていますが、聞いたことがあるでしょうか?
「糖化」とは、血液中に存在する糖がタンパク質や脂質と結合する反応(グリケーション)のことで、これが身体の体タンパク質で起こると変性を起こして老化の原因になると騒がれているのですね。
そこでビックリだったのが、ここ何年かで、果物や野菜に含まれる「果糖」や「乳糖」は、「ブドウ糖」に比べて糖化を起こす確率が、15倍も高いということがわかったのです。

1980年までは、果糖であるフルクトースもブドウ糖グルコースもあらゆる糖は同じようにタンパク質と結合して糖化産物であるAGEを形成するものと考えられていました。しかし、その後の研究では、フルクトース(果糖)とガラクトース(乳糖)は、グルコースに比べて10―15倍糖化反応が高くなることがわかったのです。
それに伴いインスリン抵抗性が高くなる可能性とリスクも高くなります。

いやぁ。どうなんでしょう「果糖」。
悩みますね。

もちろん果糖はいくらナチュラルでも「糖」として捉えるべきだとは思います。しかし、果物は食物繊維やビタミン、ミネラルがたくさんに含まれているのも事実で、先日の臨床栄養士の佐藤先生ともこの話をしましたが、量や形などを考慮して摂取すれば問題はないのではないかと私の中では考えています。

糖というのはエネルギーとして以外にも身体の中で、さまざまな役割があります。その糖分を得る素材としては、果物や野菜の糖はそこまで敬遠するものではなく、量や摂取方法によっては最適な食材になると思います。
「糖化」についても、老化や糖尿病に関わっているのは間違いないですが、「糖化」は、熱や光などによって起こるメイラード反応によるものです。実は、その糖化産物AGEが悪さするのではなく、体内に入って身体を構成しているタンパク質と糖が結合して反応することで、そのタンパク質やそれらの集合体の働きを阻害してしまうことが問題なので、体内に入る前に食品を調理してAGEを形成させてしまえばよいのです。
要は、果物や野菜を食べる前に加熱して調理するということなのですが、野菜などで糖分が多いものはこういった方法を使えば、身体の中で糖化反応を起こさなくて済むわけです。
もちろん熱するとビタミン・ミネラルが少なくなるので、そこらへんは難しいところですが、そういう知識を知っておくだけで恐れることはありませんよね。また果物は大抵、生で頂きますが、その場合でも量を摂らなければ問題になることはないと思います。
果物はたまに旬のものをデザートで楽しむということで良いのではないでしょうか。
もちろん血糖値の問題がある人や中性脂肪が高い人は、気にするべきですが、糖の性質を理解し、摂取する形や量を考慮すれば、食事も楽しむことができます。

 

 

 

最後にまとめ

現代人では血糖値に関する問題が多く見られます。
これはまさに血糖値に関係する「ブドウ糖」の摂り方に問題があったからだと思います。現代では、高GIの食べ物(精製された炭水化物)やブドウ糖メインの主食を摂取する以外にも、砂糖(ブドウ糖を含んでいる)を使った加工品やお菓子を食べる機会も多くなりました。

こういった背景の中で、ブドウ糖やブドウ糖の集合体であるデンプン質の摂取を減らしてあげるだけで、カラダの調子が良くなる方が多いと思います。

糖はたしかに大事な栄養でもあります。
腸内細菌のエサでもある糖。まったく摂らないとそれはそれで問題です。
私は、血糖値に関わるブドウ糖の摂取量には気をつけていますが、果糖に関しては、あまり神経質にならずに果物や野菜を楽しみながら摂っています。
また料理にもほとんどお砂糖は使いませんが、うちの奥さんがそれだと料理にならないというので(笑)甘味が欲しいだけ、腸内細菌のエサになる「オリゴ糖」を使ったり、果糖メインのお砂糖を少量使っています。

普段あまり気にしたことはない「糖」の話だったと思いますが、知っていると知らないでは、食に対する意識もかなり違ってくると思います。
是非今日読んだ知識を頭に入れて、糖について自分なりに考えてみてくださいね^^。

私もまだまだ考察中です^^。

 

 

K.K.

 

 ——————————————————————————————————————–

カイロプラクティックは、薬は使わず手だけで身体の治療をするアメリカ生まれのヘル
スケアです。
みなさんに知られているような筋肉骨格系の治療はもちろん、カイロの中の一つの学問
アプライドキネシオロジーでは、自律神経や内臓、ホルモン、神経、栄養のアンバラン
スをチェックし、それに対する治療を行うことができます。
アメリカではまさしくプライマリーケアとして認められ、準医師として統合医療の一翼
を担っています。

カイロプラクティックケアを希望する方 CONTACT 

麻布十番のカイロプラクティック治療院 CHIROPRATICA

———————————————————————————————————————